珍しい植物を求めてタイへ その7 葉で楽しむアンスリューム

  • 2020年4月15日
  • 2020年4月15日
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アンスリュームは、サトイモ科の多年草で和名をベニウチワと言う。これは赤いハート型の仏炎苞に黄色い花芯のアンドレアヌム(andreanum)種の赤い仏炎苞のイメージからくる。ちなみにアンドレアヌム種の和名はオオベニウチワと言う。

アンスリュームが鉢植えのポットアンスリュームとして楽しまれるようになったのは、比較的最近で、90年代半ば頃からである。それまでは、一部でセリゼリアヌム(scherzerianum)やヒメアンスリューム(おそらくアンドレアヌムの実生選別種)が鉢物として生産されていた。ポットアンスリュームが日本で量産される少し前の1980年代後半からオランダ、ドイツで本格的にポットアンスリュームの量産が始まったようだ、そしてその品種の苗が日本にも導入されて90年代半ば頃から日本で量産されるようになった。

アンスリュームでハワイ諸島を連想する人は、ある程度年配の人になるかもしれない。それこそ、1980年代初頭までハワイ州は世界一のアンスリュームの生産量を誇っていた。もちろん切り花主体である。ハワイのアンスリュームの生産は、ハワイ島のヒロと言う地域に固まっていた。そこは、戦後に沖縄などから入植した日本人入植者の多く、彼ら入植者が、サトウキビ生産から気候に合ったアンスリュームの生産に転換し始めたようだ。

1980年初頭にハワイ島にフラッシュ(確かそんな呼び名だった)と呼ばれる、ウイルスが蔓延し、アンスリューム生産に大打撃を与えた。ハワイでのアンスリュームの増殖は、株分けや伏せ(地下茎を伏せ、新芽を吹かす方法)による増殖が主流で、その方法では、一度ウイルスの汚染されれば、ダメージが大きく。新たに植えた株はすべてウイルスに汚染される結果となった。

一方、その頃、ヨーロッパでは、メリクロンによる苗生産が普及し始めていた。メリクロン増殖の特徴の一つははウイルスフリー苗(ウイルスス汚染されていない苗)と言う点である。簡単に説明すれば、ウイルス汚染される前の、成長点細胞から増殖させる為、メリクロン苗は、基本的にウイルスフリーとなる。メリクロン苗が普及する事が、きっかけに、アンスリュームの世界シェアは、オランダに移った。また、メリクロンで大量の苗が供給されるようになり、ポットアンスリュームの生産が可能となった。

そんな、こんなで、現在日本の園芸店やホームセンターなどの店先でば色彩豊富で大小さまざまなポットアンスリュームが一年中店先を飾っており、わずか25年余りで、その品種幅は他の鉢花を圧倒する事となった。

またまた、ずいぶんと前置きが長くなってしまった。今回は、普段日本の園芸店ではあまり売られていない、しかし、扱いやすく、長く楽しめる、「葉を楽しむ」観葉系と呼ばれるアンスリュームを紹介します。

アンスリューム ラディカンセ Anthurium radicans 葉柄は短く、ハート形で凹凸のある葉で、葉の裏はブラウンで新葉も明るいブラウンで吹き、徐々にグリーンに変化する。花は株元に低く咲くが、あまり鑑賞価値はない。

アンスリューム モロネンセ Anthurium moronense  アンスリューム ペダトラディアツム和名ヤツデハウチワ(A.pedatoradiatum)に似たヤツデハ型の葉が特徴。葉の形状が面白く、商品性は高いと思うが、なぜかあまり量産されていない。よほど作りにくいのだろう。

アンスリューム スパーバム Anthurium superbum

私個人的にはもっとも好きなアンスリュームである。長卵形の葉は艶のある濃緑色で肉厚で固く上を向く。また新葉はラディカンセ同様ブラウンで吹き、徐々にグリーンに変化する。花は株元に咲くがあまり鑑賞価値が無い、また、かなり大株にならなければ開花しない。生育は非常に遅い。

スパーバムの変異種で丸葉のセレクト

アンスリューム パリディフォリューム Anthurium paridyforum

葉の垂れるタイプのアンスリュームでウエンドリンゲリ(A.wendlingeri)に似る、ウエンドリンゲリの葉は、非常に硬く、まっすぐに下に垂れるのに対し、本種は円弧を描いて下垂する。また、本種の花芯はまっすぐに伸びるだけだが、ウェンドリンゲリの花芯は、豚の尾の様に螺旋に捩じれる。

アンスリューム ロエフギレニー Anthurium loefgrenii

長卵型の整った葉は皮革質で見た目より固い。また、花は薄緑色の質素で、鑑賞価値はあるが、葉の展開が、通常のハイブリッド種に比べ遅いため、花上がり悪い。

次号に続く